ロードバイク用ビンディングシステムに関する知識まとめ
- 2021.06.19
- ロードバイクの勉強
- ビンディングシューズ, ビンディングペダル, ロードバイク
ロードバイクでは、より早く、より楽に長時間走行する為に足回りにビンディングシステムが搭載されています。
そもそも、ビンディングとは足を固定する器具の事でスキー発祥のシステムです。
今回は、ロードバイクに用いられるSPD-SL型の「ビンディングシューズ」「ビンディングペダル」や足回りに関するチャイルドマニュアルです。
ビンディングシステムの構成要素
ビンディングシステムは、シューズ/ペダルと二つを結合させるクリートから構成されています。通常のフラットペダルとは違い足がペダルに固定されます。
システムモデルはSPD-SLモデルとSPDモデルに大別されます。
一応、SPD-SLは主にロードバイク(ロードレース)用でSPDペダルはグラベルやMTB用とイメージしておいてください、勿論目的がハッキリしていればSPDをロードバイクへ導入しても何の問題もありません。
どの要素も、シューズ裏面のボルト装着の穴が2/3/4個と製品により違うので、この点は留意してください。基本的に、SPDは2穴・SPD-SLは3穴(一部モデルは4穴)です。
SPDとSPD-SLの差は装着力や歩行性、踏み面積の広さなどです。
SPD-SLはがっつり足を固定されるので、ロードバイクの怖さの源といっても過言ではないのですがある種必須級アイテムとなっています。
何故必須級アイテムになるのか?
引き足が使える
固定されていることで、足を上げる際の動きで円運動をサポートできます。フラットペダルではこの引き足が使えないので押し下げる(踏む)力のみで推進力を得るのですが、踏む側の逆においても力をかけることで楽に早く走れる、といった仕組みになります。
ただし、単純計算で倍になるの?といった部分については、引き足使ってもそんなには変わらないのが本音のよう。
片足は全体の15-17%の重さの為(60kgの成人男性の場合、9-10kg)、この重さ分をペダリングの際の脱力と引き足で帳消しにできるのであれば疲労も減るし、踏むときのパワーがよりロスなく推進力に代わるし、加速する時には全部の筋肉を使う事ができるよね、という事で長所になります。
引き足時に使う筋肉は黄色・青・緑の領域で、そんなに大きい筋肉ではないからそこまで効果もない、ということだそうで。
引き足については意見が分かれるが、0ではないもののそこまで大差ではない
力を入れやすくなる
SPD-SLのビンディングシステムの場合、パワー伝達過程において限りなくロスを減らす設計になっている。
主な5要素は下記の通り
①スイートスポットで、かつ広い範囲を踏める
②足や足裏がずれない。ケイデンスを高め(100rpm以上とする)にしたり、ダンシングや悪天候時にスリップしにくくなります。
③引き足が使える。また、支点(臀部)が固定される
④専用シューズはカーボン等剛性の高い素材を使用
⑤円運動を綺麗に実行することで、いわゆるペダリングロスを軽減
装着・脱着について 注意点等
基本的には右足からハメて、走り出してから左足をハメる順番です。ペダルへのクリートのハメ方動画参照。
但し、スピードプレイ(Wahoo)のペダルは上から真下に力を入れてハメる形なので注意。
外すときは左側を外し、一時停止して足をつくのが一般的だと思います。その為、大抵左側のクリートがかなり早く摩耗します。
結構みんな立ちごけするそうですし、事故に直結する最大の要因の為公園や家の前で十分に練習しましょう。
減速もビンディング外すタイミングも早めの方がいいです。外した後はバイクが動いている間ペダルの上に足を置いたままでも構いませんが、不意に再装着しないように気を付けましょう。
入る時は結構簡単に入っちゃいます。
また、一時停止する際に外した足を縁石に置くのは良いのですが、縁石の材質によっては物凄くすべるので注意してください。
クリートの種類によっても左右されるので、できれば縁石上に足をおかないのをオススメします。
ビンディングペダルの要点と種類
ビンディングペダルでは下記の要素を考慮する必要があります
・Qファクター
両サイドクランクアーム外側間の距離、が本来のQファクターの意ですがペダルでのQファクターはクランク外側からペダル中心部までの距離です。
どちらも足の開き具合に影響するという事だけ覚えておきましょう。
例えば骨盤が広いタイプの方は、ペダル軸距離やペダル形状を考慮し、広くとる方がよいです。
逆に狭い場合は、Qファクターを広くとるとガニ股みたいになるので気を付けましょう。
エアロダイナミクスを考慮する場合は狭く、トップチューブ等に足がぶつかる場合は広くという考え方もあります。
コーナリングする際、あまり広くすると傾斜を出すと路面にペダルがヒットする可能性もありますが、レースシーンでもない限りは起こりえないはずです。
通常、MTBは広めなのでMTBメインの方はQファクターを広くとると感覚が近くなるそうで。
・踏み面の広さ
パワー入力に最も重要な要素で、形状が最も影響する点です。各メーカー差が大きい点で、あまり各社内でのモデル差は大きくはない印象です。
・重量
勿論ペダルなので、足回りの軽さは正義。
ただし、ホイールとかの軽量化に比べたら遥かに優先度は低く、軽いモデルは往々にしてハイエンドモデルの為、金額や装着力等で折り合いが合わないケースも。
SHIMANOのケースでは、Dura-Ace 228gでTiagraは310(いずれもペア)程度の差がでます。
・スタックハイト
装着部のペダル最下点から表面まで+クリートを合わせた高さ。もうちょっとわかりやすく言うと力がかかる点から靴底面までの厚さ。
これによって、円運動をするときの足の軌跡が微妙に変わることと、サドルやハンドル高が変わります。数mmの世界ですがクランク長の5mmを大差と考えるのであれば大切。
レースユースの場合はペダル、シューズ、クリートを一気に変えると違和感が出ると思います。
バイクフィッティングの際、自分の使っているビンディングシステムを持参するのはこれが原因かと。
・リリーステンション
ビンディングペダルから足を外す際、どの程度のねじり力で脱着するのか。
軽い力で外せると楽ですし最初の内は安全です、その代わり簡単な衝撃で外れてしまいます。
強い力でないと外せないと、停止時の安全性を損なう代わりに変なタイミングで外れて安全性を損なう事もないでしょう。
製品ラインナップによってはSHIMANO ライトアクションのように、軽く外すことを主目的にしたモデルもあります。
ライトアクション系統は軽く外せるからといって決して「初心者向け」ではなく、膝への負担軽減や公道上での安全マージン確保という意味合いもあるのでオススメ
・材質
各社重量・剛性・外しやすさ・耐久性・回しやすさがシャフトやベアリングペダル素材そのもの、と違いがあります。
ビンディングペダルメーカー
メインは4大メーカですが、最近はペダル型パワーメータ搭載の機種も各社が出しているので、そのあたりも紹介。
SHIMANO
説明不要のコンポーネントメーカ。かなり多くの人がSHIMANOペダルを使用しています。まず最初はSHIMANOをオススメします。入手性良し、踏み面大き目、非装着時にきちんとカカト側が下に来るのでハメやすさ◎。
ラインナップはDura-Ace/Altegura/105/Tiagra/ライトアクションの5種。上位2モデルは+4mm軸モデルがありQファクターの調整が可能。
Wahoo(speedplay)
昨年スマートトレーナーやサイコン等で有名なWahoo社に買収されました。大手ビンディングペダルメーカー4社の中でも形状が特殊で円形のペダルで、ペダル側には特に機構が組み込まれていません。
また、4台メーカの中では唯一ラインナップに「パワーメータ型ペダル」が加わりそうです。
こちらについては、「POWRLINK ZERO」と名前のみ出ているだけで詳細は不明。まあ、パワメでも出したいわけじゃなきゃ態々買収しないよね、というお話。スマートトレーナーと組み合わせたいんでしょうし。
モデルはハイエンドのNANO/エアロモデルのAERO/Qファクターの変更できるZERO/イージーテンションのCOMP
Wahooになっても大きく変更が加わったわけではなく、若干の製品改良が入ったくらいです。
Look
元々、ロードバイク用SPD-SLはLook社が開発したものです。SHIMANOのSPD-SLはLook社のものが原型の為、どちらも似たような見た目と仕組みですが、LOOKのはデザインが良い。後少し外しやすいわりにはきっちりクリートをキャッチする。
モデルはレースモデルのKEOブレード(材質と値段の差で3種類)/ミドルグレードのKEO 2 Max/エントリーのKEO CLASSIC3の大きく分けて三種類。
SRAM(TIME)
無線変速コンポーネントのRed etapで有名なSRAMがフレームで有名なTIME社のペダルを昨年買収。
かなり独特なペダル機構で、つま先側が完全に固定されておらず少し動きます。更にセンタリング機能があるので真ん中に押し戻す。左右にも少し動きます。
また、ハメる機構もつま先にひっかけてそのままカカトを落とすと、スイッチが押し下げられて板バネがクリートカカト側をキャッチする機構の為簡単にハマり簡単に外せる。
TIMEは膝にやさしいともっぱら評判ですが納得の複雑さ。少しわかりにくいので、下記動画をどうぞ。
ラインナップはXPRO/XPRESSOの大きく分けて二つ。XPROは踏み面が大きく、レース用上位モデル。
・Garmin
サイコンやスマートウォッチで有名なGarminですが、サイコンに搭載できるデータ関連という事でペダル型パワーメータを取り扱っています。
Vector3という少し前のモデルは、初期モデルが特に問題だらけで不評でしたが2021年に入ってからシマノSPD-SLクリート用モデルにも対応した「ラリー」を発表、高評価のようです。
ペダルは損傷しやすいので、この部位に効果なパワーメータ機能が搭載されていることに不安を覚えるかたもいるそうですが、ボディはユーザで変更可能ですし落車等衝撃にも強いようです。主要センサーはペダル軸に集中しているので滅多な事では壊れないはず。
廉価な片足モデルもあり、どのロードバイクにも装着できるのはとても良い。
両足モデルで12万8千円と高いのがネック。
・Favero Assopma (ファベロ・エレクトロニクス)
イタリアのスポーツ電子機器企業が取り扱うペダル型パワーメータ「Assioma」
金額が両足モデルで国内流通定価8万円と安価。
クリートがLOOK KEOのみでガーミンで悪名高いペダルポッド型なものの、安い、充電式(マグネット式)、それなりの良精度とサイクリストの間で最近話題です。問題は話題なのか、メーカが話題に投資しているのか気がかりなのですが・・・。
IVAサイクルダイナミクスという技術のおかげで、瞬時に角速度を計算。その為表示される結果もダイレクトで、楕円クランクにも向いているそう。
データ解析も、ペダルセンターオフセット(ペダルのどの軸に力が入っているのか)以外には大体の項目に対応。
ある種入門編パワーメータとしては間違いなく最適だと思います。
クリートについて
・フローティング角度
ペダルへシューズ/クリートを固定した際の横方向のあそび。
この"あそび角"が大きければ大きいほど、膝にやさしいと言われています。但し、ダンシング時やハイケイデンス時に動く感じが集中力をそぎます。
クリートの種類によってこの遊び角度は変わります。
・調整幅
ビンディングシューズの裏面には、ボルトをハメる所があるのですが、ボルトを軽く締めた状態からどの程度動かせるか、が調整幅になります。
基本的には、親指の横のでっぱている骨と小指の横のでっぱている骨の間の面(母指球と小指球)で踏むのが良いとされているので、そのラインに来るように調整。
出力を出す際に、回転数を上げたい場合は指側へ、トルクをかける場合はかかと側へ調整します。
左右は自分の足の形状と相談。最初は真ん中につけてみてください。
・(EX)カント調整
足裏の傾斜を調整することの意。骨盤のゆがみの所為か、足裏踏み面に左右で傾斜が生まれることがあり、この傾斜をクリートにスペーサを挟むことで調整。
1-2°の調整ができ、薄いシート形状。BIKEFIT製が有名。
もし足裏や膝に違和感を抱えたら是非試してみてください。
また、SHIMANOの場合は「クリートスペーサー」と呼ばれるものが販売されており、これで左右の足の長さの影響を調節できます。
・メーカーごと
SHIMANO
赤0°/青2°/黄6°の三種類。この数字は端から端まで動かした数字なので、黄色の場合実際は片側に3°のフローティングです。
但し、黄色クリートは膝にやさしい機構でクリート中心を軸に動き、青はつま先側固定でカカトが左右に動く仕組み。
Wahoo(speedplay)
0-15°で自由に調整可能。ペダル側に機構が組み込まれていない為、クリート側に調整機能やハメこむ機能が搭載されている。また、前後に14mm移動させることができる為理想的な位置を決定できる。左右もきちんと設定可能。
また、踏み面がかなり広い。ペダル自体は小さいものの、機構が備わっているクリートが広い事によって安定感がある。
クリートはテンション別で、黒色のスタンダード/グレーのイージーテンションの二種類。クリートカバーがとても優秀で、カバーを装着したままビンディングシステムを使って走行可能。最初は別売りを買わなくてもセットでついてくるようです。
注意点として、Speedplayは4穴用になっているので、3→4穴変換シムが必要です。:変換シムの購入はこちらから
また、下記の記事が凄くわかりやすくメリット、デメリットを掲載しておりますのでご参照ください
リンク:スピードプレイのインプレ!5つの凄さと2つのダメな点
Look
黒0°/グレー4.5°/赤9°の三種類。SHIMANOの黄色クリートよりフローティング角度が大きいので膝の自由を少し聞かせたい場合はLOOK製もいいかもしれません。
また、現状市場にあるペダル側パワーメータはほぼほぼLOOKクリート対応。
SRAM(TIME)
0°/10°固定クリートと通常クリートの二択。クリートを止める3点の内、一番つま先側の部分のみ左右方向に調整が可能。その為、角度と前後方向は位置を調整できるものの、全体的に左に寄せる、右に寄せるといった事はできない。
これを自由度が低いととらえるか、位置決めをしやすいととらえるかは人それぞれ。
但し、Qファクターの調整はクリートの左右を行えるので微調整が重要な方以外は問題ないと思います。
クリートにLRが書いてあるので、広くとりたいのであれば逆に装着してください。
ビンディングシューズの要点
・留め具
所謂靴紐システム。ビンディングシューズでは、ベルクロ/BOAダイヤル/紐が主な留め具です。デザイン性、フィッティング、着脱の楽さで選びましょう。
ダイヤル・・・一番有名なのはBOAダイヤル。ボタンを押し込み、回せば閉まるシステム。釣り具の用なワイヤーを引いて締め付けを調整するので、強弱を用意に調整可能。走ってる間でも、ゆるかったら簡単に閉め治せます。ロードバイク用ヘルメット等にも採用されています。
1or2個ついており、基本的にはダイヤルが2個付きのものが手軽さやフィット性では最上。企業によって配置を変えていたり3個あるモデルもあります。
下記画像の通り、締め付け部が分散されており、足にかかる負荷を軽減しています。オススメはこちらのシステム。
紐・・・Giroを代表とする一部メーカでは使われている。BOAダイヤル式が合わなかった場合、紐の締め方で自分の足に合った締め方をすると良い。但し、装脱着に難ありなのと紐がほどけると危ないので注意。一番スタイリッシュ。
ベルクロ・・・バリバリ、金額が安め。ベルクロの本数によって装着感が変わります。3本タイプが場所によって締め付け具合を変更できる為良し。
・ソール
靴裏の材質。一般的に、硬ければ硬いだけ剛性があり、力の伝達力は優れているとされています。但し、あまりに硬い靴を履くと足裏の疲労感がハンパなく、踏み面にダメージを追います。
大別するとカーボン/樹脂(ナイロン)/カーボンとナイロンのMIXがあります。また硬いカーボンの中でもグレードがあり、往々にしてハイエンドは相当硬いです。
カーボンのメリットデメリットは軽量で力の伝達が良好な反面、各関節や足裏が疲れたり痛くなるケースがある。
樹脂系のメリットデメリットはカーボンに比べると多少柔らかく、その代わりに伝達力が落ちるといった感じです。
とはいっても、クランクだのフレームだのの硬さの方が足に来ると思いますし、インソール(中敷き)を良いもの使えば相当マシになると思います。
また、ソールのアーチが足を支える形状になっているか。この当たりは各メーカーが切磋琢磨している点ですので、是非試着して感覚を確かめてください。
・フィッティング
靴全般でいえることですが、サイズ感や足の甲、くるぶし、かかとがうまく合っていないとズレて痛みがでます。
ビンディングシューズは履いた後、かかとのカップのような部分に足を合わせましょう。
お店によっては、シューズ、クリート込で計測器を使ったフィッティングをしてくれるお店もあります。
・通気性
夏の涼しさを得る代わりに冬はきつくなる通気性の良さ。そもそもビンディングシューズは通気性良好ではあるのですが、ニット素材のモデルは往々にして通気性抜群ですし、WINTERモデルの物はそこまで良いわけではないです。
いっそ何足か持つのであれば、使用する季節を定めて購入しましょう。
おわりに
以上、意外とクッソ面倒な要素まみれのビンディングシステムでしたがいかがでしょうか。最初の内は、とりあえず皆やってるし履いてみるか程度だと思います。
とにかく危ないといえば危ないので、気を付けてくださいね!別にフラットペダル使っていても支障はないですし。
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